昨年に国会で成立した会社法の一部を改正する法律が、本年5月1日から施行されました。
改正法の骨格は次の2点です。
1つは、企業統治のあり方の見直しです。
社外取締役の独立性強化、監査等委員会設置会社の導入などが挙げられます。
もう1つは、親子会社に関する規律の見直しです。
多重代表訴訟の導入などがあります。
近年では、中小企業の間でも社外取締役を選任する動きもある等、対応が必要となる場面もあります。
ただし、今回の改正の多くは上場企業・大企業を念頭においているので、中小企業の実務に直接的に影響するものではありません。
このコラムでは、中小企業が知っておくべき改正事項を、4つ取り上げます。
① 監査役の監査範囲の限定と登記
② キャッシュ・アウトの制度
③ 債権者を害する会社分割への対抗策
④ 多重代表訴訟
まず、形式的な手続き面に関して、①監査役の監査範囲の限定と登記があります。
監査役の権限には、業務監査と会計監査の2つがあります。
非公開会社(定款で株式譲渡制限を定めている会社。中小企業の多くが該当。)では、監査役の権限を「会計監査」に限定することが可能です。
具体的には、株主総会で提出される計算書類をチェックし、監査報告を作成することが業務となります。
改正前においては、このような監査役については定款を見れば分かりましたが、登記上では区別されていませんでした。
そこで、改正法では、「監査役の監査の範囲を会計に限定する旨」を登記に反映させることにしました(911条3項17号)。
ただし、経過措置が設けられています。
すでに監査範囲を限定されている監査役がいる会社では、改正後最初に監査役が選任・退任するときの登記に併せて、登記をすれば足ります。
ですから、今の時点で会社の登記を取っても、すぐに反映されるわけではありません(なお、監査役の任期は最長10年まで延長可能です)。
参考までに、会社の機関について述べておきます。
非公開会社の中小企業では、取締役会を設置しなければ、そもそも、監査役は不要です。
取締役は社長だけ、加えても息子や奥さん、監査役はいない、といった中小企業も多く見られます。
それなりに規模が大きくなると、非公開会社でも取締役が3人以上となり、取締役会を設置する方向になっていきます。
取締役会を設置した場合には、監査役は必須です。
次回のコラムでは、②キャッシュアウト制度について説明します。