【交通事故】もらい事故?判決

4月13日、福井地方裁判所で出た判決がニュースで大きく取り上げられました。

「車同士が衝突し、センターラインをはみ出した側の助手席の男性が死亡した事故について、直進してきた対向車側にも責任があるとして、遺族が対向車側を相手に損害賠償を求めた訴訟の判決が13日、福井地裁であった。」

(福井新聞ONLINEhttp://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/accidentandincident/69100.html

判決文は、裁判所のサイトで公表されていますhttp://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/058/085058_hanrei.pdf

 

裁判所は、対向車側(車の保有者、運転手)に損害賠償責任を認めました。

なお、対向車側の運転手は、腰椎圧迫骨折等の重傷を負って後遺障害がのこりました。当然ですが、センターラインをはみ出した側の責任も認められています。

 

報道などで注目を集めた背景には、センターラインをオーバーしてきた車両に対しても、対向直進車が損害賠償責任を負ったことにあるのでしょう。

本件の事故現場は、片道1車線の見通しのよい道路でした。また、センターラインをオーバーした車両の運転手は、居眠りしていました。

それなのに、対向直進車が責任を負うのは理解しがたい、と思われるかもしれません。

 

ポイントの1つは、自動車事故での法律の適用の仕方にあります。

自動車事故では、通常の不法行為(民法709条)のほかに、「自動車損害賠償保障法」(自賠法)が適用されます。

自賠法3条は、運行供用者(車の所有者、運転者)について

「・・・その運行によって他人の生命または身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、・・・証明したときは、この限りでない。」

と規定しています。

これにより、自動車の所有者、運転手は、いったん事故が起きたら賠償責任を負うのが原則となり、裁判で「自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと」つまり「無過失」だったことを証明して初めて免責されます。

実際の交通事故の場面で、「無過失」を立証できる場面はかなり限定されます。

本件の場合、裁判所も、センターラインをオーバーした側の過失が極めて重大であると指摘しており、事故の大半の原因があるのは明らかです。

それでも、対向車側が「無過失」まで立証できなかったことから、責任を負う結果となりました。

 

2つ目のポイントは、本件が「もらい事故」といえるのか?という点です。

そもそも、「もらい事故」の定義がはっきりしませんが、一般的な理解は、前方を注視して直進していたところに、突然、対向車がセンターラインをオーバーしてきたことから衝突した、といったところでしょう。

こうした典型的な事故であれば、直進車としても回避しようがなく、まさに「無過失」となるでしょう。

ところが、本件の事故状況はもっと複雑です。事故状況

対向直進車が衝突地点に達するまでの間、対向直進車の前には2台の車両が走行していました。

そして、問題の車両がセンターラインを越え始めたところで、まず、先頭の先行車が左にハンドルを切って逃げています。

その後、2番目の先行車(対向直進車の前を走行)も、左に寄って逃げています。

そうすると、対向直進車と先行車(特に2番目の先行車)との間の距離いかんでは、対向直進車の運転手がもっと早くセンターラインをオーバーしている状況に気づけた可能性が出てきます。

早く気付けていれば、急ブレーキをかけるタイミングも早くなりますし、クラクションを鳴らすことで事故を回避できたかもしれません。

実際の判決文では、これらの状況について細かく言及したうえで、なお「無過失」の立証がないと認定しました。

 

もっとも、だからと言って、対向直進車に「過失」があったことになるわけではありません。

証拠上、対向直進車の運転手が、どの地点でセンターラインオーバー車を発見できたのかは認定できませんでした。

結局のところ、対向直進車に「過失」があったのかどうか分からなかったのです。

その場合、自賠法3条の場面では、対向直進車が賠償責任を負う、そういう決まりごとに従ったということなのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

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