最近固まった民法改正の要綱案では、事業性融資に対する個人保証は、公正証書によらない限り、無効とされます。
しかし、経営者による保証は、従前どおりに認められます。
経営者による保証は、中小企業経営のモラルハザードを防ぐ意味合いがあることは否定できません。
しかし、いったん会社が傾くと、経営者は無制限に責任を負うことになりかねず、そのことが早期に事業再生に着手することを躊躇させる傾向がありました。
こうした背景から、平成25年12月、日本商工会議所と全国銀行協会が中心となり、「経営者保証に関するガイドライン」が策定されました。
http://www.jcci.or.jp/chusho/kinyu/131205guideline.pdf
このガイドラインには法的拘束力がありませんが、金融機関が自主的に尊重するよう求めており、金融庁においても利用促進を図っています。
ガイドラインの適用場面は、大きく分けて2つです。①融資時の保証の要否の検討場面と、②保証の債務整理の場面です。
まず、①融資時の保証の要否の検討場面です。
ガイドラインが求めている要件は、大きく3つあります。
第1に、会社と経営者との関係の明確な区分・分離です。
会社と経営者との資金のやり取りを区別することは当然です。資金のやり取りも適切にすることです。
第2に、会社の財務基盤の強化です。
主債務者たる会社の返済能力をアップする努力が求められます。
第3に、財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保です。
この透明性確保の視点は、金融機関と経営者との間で温度差があると感じます。
経営者側のほうで、不利な事実も積極的に情報開示することで、むしろ信用が得られることも多いのです。
その意味で、外部の専門家による検証結果をつけることは有用でしょう。
次に、保証債務を整理する場面でのメリットについて説明します。
第1に、会社の負債が保証人が払いきれないほど巨額でも、経営者の弁済額を一定額にとどめることが可能です。
その結果、経営者に一定の生活費(最大360万円)や、華美でない自宅を残すことができます。
ちなみに、経営者が破産した場合、手元に残せる現金は原則99万円であり、自宅は処分です。
第2に、ガイドラインの手続きによれば、官報への記載がなく、信用情報機関への登録もなされないメリットがあります。
これらのメリットが経営者の再起を促すとともに、早い段階での会社の整理に着手する動機を与えることで、金融機関にとっても経済的メリットをもたらします。
ガイドラインにのっとった手続きを取る上では、各地の中小企業再生支援協議会がフォローアップしてくれますので、まずは、相談に行かれてはいかがでしょうか。