専業主婦であっても、休業損害が認められます。
専業主婦の場合、事故の影響で休んでいても、目に見える収入減はありません。
しかし、「家事労働」という言葉があるように、報酬を観念することが可能です。この点は、あまり争いありません。
問題は、計算方法です。
休業損害は、1日当たりの基礎収入×休業日数、で計算します。
まず、1日当たりの金額の計算の仕方です。
損害保険会社の提示額で多いのが5,700円です。
しかし、これに拘束される必要は全くありません。
実務では、女性労働者の平均賃金から計算します。
平均賃金は、賃金センサスを使います。
平均賃金は、年齢や学歴により金額が変わってきます。
ですから、被害者ごとに異なる金額となります。
一般的には、女性労働者の「全年齢」の平均賃金をベースにして算定します。
これ以上の金額を出す計算方法は、なかなか採用されにくいです。
また、60歳を超える高齢者の場合は、「年齢別」の平均賃金をベースにされることがあります。
全年齢の平均賃金で計算すると、働いている高齢者の賃金よりも金額が高くなるからです。
以上が大まかな傾向ですが、裁判ではさらに個別の事情を考慮して判断しています。
神戸地方裁判所平成20年11月11日判決の例です(自保ジャーナル1821号)。
被害者は、42歳の専業主婦です。裁判所は、全年齢女性労働者の平均賃金によるとしながらも、この人が数か月前にも別の交通事故にあっていて、今回の事故前から完全な労働能力はなかったとして、平均賃金の80%に減額しました。
専業主婦の休業損害のもう1つの問題、休業日数の算出の仕方は、次回に説明します。