【中小企業向け】過労死と社長の法的責任

8日、居酒屋ワタミの過労死をめぐる損害賠償請求訴訟が和解で終了しました。

和解の内容は、会社のホームページに掲載されていますhttp://www.watami.co.jp/info/151218whd.html

 

原告にとっては、100点に近い内容でしょう。裁判では勝訴しても金銭の賠償を得るだけですが、和解によれば、謝罪、再発防止策などを盛り込めます。原告以外の社員に対しても、未払賃金返金、購入させた本の購入代金の返金までさせる徹底ぶりです。

 

注目すべきは、当時の社長であった渡邉氏の損害賠償責任を認めた点です。和解条項には、こうあります。

「被告渡邉美樹は、被告会社らの創業者で長らく代表取締役を務め、同人が形成した理念に基づき被告会社らを経営し、従業員に過重な業務を強いたことなどから、会社法429条1項に基づく注意義務及び条理に基づく注意義務を懈怠し、(元従業員)の本件死亡について、会社法同条及び不法行為により、最も重大な損害賠償責任を負うことを認める。」

 

会社法429条1項は、取締役の第三者(従業員、取引先、株主など)に対する損害賠償責任を定めた規定です。この規定に基づいて、取締役の責任が認められるためには、「悪意または重過失」が必要です。これは、高いハードルです。単純な過失では足りません。

 

長時間労働に起因する過労死では、労働時間を立証できれば、会社に対する損賠賠償請求は比較的やり易い面があります。しかし、取締役(特に、社長)の責任まで追及する場合、「重過失」の立証はそう簡単ではありません。

今回のワタミのケースは和解で終了しましたが、和解内容を見る限り、判決になったとしても、取締役の責任が認められていた可能性が高いと思われます。つまり、ワタミの取締役には「重過失」があったと裁判所は心証を持っていたのでしょう。

 

過去には、判決において、取締役個人の責任を認めた裁判例もあります。全国チェーンの居酒屋の店舗従業員が過労死した事件で、会社とともに取締役の損害賠償責任が認定されました(京都地裁平成22年5月25日判決)。最高裁まで争われましたが、そのまま確定しました。

 

入社後4カ月に急性左心機能不全で死亡。残業時間は、直近1カ月前から順に103時間、116時間、141時間、88時間でした。

この会社では、36協定において、1カ月100時間を超える時間外労働を年6回認めていました。また、給与体系では、公表する基本給にからくりがあり、80時間の時間外労働しないと最低支給額に達しないこととされてました。

 

判決では、こうした一見して不合理な36協定や給与体系を採用していたことを根拠として、社長を含む取締役らに会社法419条1項の責任を負わせました。

月100時間超の時間外労働は、急性の心疾患発症との関連性が強いと評価されます。個別の従業員を管理監督する立場にない取締役であっても、月100時間超の時間外労働を前提とする制度を構築していたとなれば、いつか過労死が生じることを予測可能だったと看做されるわけです。

 

この判決は、従業員が数百人単位の大企業のケースです。

これが社員が数十人で、社長が毎日従業員と顔を合わせるような企業であれば、さらに、取締役個人の賠償責任は認められやすくなります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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